春のうた

山の向こうの丘の上に
春を告げる花が咲いて
煙のように立ちこめる
むせかえる花の匂いに
君の気配を思い出した


いつかの夏の軒下に
置き去られて雨ざらし
色あせてひび割れて
いつまでも忘れない


かさついた冬の足音
はなやいだ春の足音
高らかな鳥のさえずり
たよりない君の口笛
胸のうちにこだまして
春のうたが響き出した