研ぎすませ 耳をすませ 後ろ向きでも 前へ進め

晴れのち曇りがよく似合う 甘いものでも食べて ラジオなんかつけて 寝っころがって本でも読もう 眠くなったらそのまま昼寝 犬はしたり顔 猫は知らん顔 いつもとは違う時計が時を刻む ちょっとつまらないくらいでちょうどいい

バイト早退して上り電車を待つ駅のホーム ぼんやり曇った空の下 自販機で買ったホットミルクティーの甘さ温かさに じんわり気もちがゆるんだ

慌ただしく家を出て ふと見上げた青空に 白い月が浮かんでいると 一瞬 何だかたまらないような 心がしんとするような 気もちになる 昨日シロフクロウの出てくる夢を見た 私の平穏はいつ果てるともしれない不確かな基盤の上にかろうじて成り立っている脆弱な…

気温がぐんと低くなって 空気が乾いて澄んだようになって 空は高くなって 青くなって 紅葉の手前の しんと静まりかえった季節 今にも時が止まりそうな錯覚をおぼえる それはどこか死の気配に似ている しんとした青に心がのみこまれてしまいそうだ

仕事のあと 夜ごはんを早目にすませて歯医者へ行った 帰り道 十月の冷たい雨に降られ 閑散とした小さな商店街を さえない気分で傘さしてとぼとぼ歩く 店じまい間近の八百屋の店頭に 黄色と緑のまだら模様の 小粒のミカンが光ってた 先週は同じところに紅玉が…

平日に休みをとって久しぶりに銭湯へ行った 車に乗って一人で行った 寝不足でぼんやりしたまま もっとぼんやりしに行った ひろびろとした湯につかって 空やカラスや木々の緑をただ眺めたり 裸の女のひとたち 老いも若きもとりどりに 見ているうち 自分すら外…

ほんとに好きできちんとつき合った相手とは たとえ恋は冷めても図らずも育ってしまった関係性のせいでたやすく離れられない、 そんなよくある状況をこの歳になってようやく身をもって知る それってそんなに悪いことでもないんだろうな 大人になりきれない私…

かわいた手のぬくもりにつつまれて 気もちのどこかが ほんわりとあたたかくなるのも たしかなのであって きっとまだうしなえない