夢の胎児

しょっぱい夜の涙の海に
新たに雨が降り注ぐ
真っ暗な水面に音もなく吸い込まれる
昼に見た砂上の楼閣は見る影もない
注ぎ込む川の流れも
浜を洗う波の調べも
一時も止むことなく
変わらずに続くように見える
本当はわずかずつ形を変えているのに
そう変わらないものなどありはしない
同じように見えるのは錯覚に過ぎない
物語なしでは生きられない生命の宿命
そうやってどうにか生き延びてゆく
律動に身をゆだねて
退屈に身を泳がせて
限られた時間の枠の中
見果てぬ夢に追いすがる