ロケンロー

うたが好きだ
歌詞というより詩に近い言葉
他の誰とも違う特別な声
形を持たない目に見えない「なにか」を
かたちとして伝えてくれる


最後に聴いたのはいつだったかさっぱり思い出せない
十代のころ心酔して繰り返し聴いたバンドのCDを
久しぶりにかけてみたら
徐々に音楽に引き込まれるうちに
ライブもケイタイもネットもセックスも車も入院も存在してなかった頃の人生の手ざわりが
輪ゴムをぱちんとはじいたような勢いでよみがえって


目下頭を悩ませている下らないあれこれなんか自分には本当にどーだって良いことだったんだ
と思い出して
皮膚が一枚むけて中からつるりとした自分が出てきたみたいで


そうだった この声だった この言葉だった この音だった
一人きり心の中で大事にあたためてたのは


「いつでもまっすぐ歩けるか
 湖にドボンかもしれないぜ
 誰かに相談してみても
 僕らの行く道は変わらない
 手掛かりになるのは薄い月明かり」


「いつかいつでもいいから強い風ならば
 僕をかかえて吹き飛ばしてよ
 できれば南の方へ」


「思い出は熱いトタン屋根の上アイスクリームみたいに溶けてった」