それは馴れ合いではなく

小川洋子対話集

小川洋子対話集

対談集って結構好きで昔はよく読んだけど最近はそんなに読んでないことにふと気づいた。これもそれほど気乗りせずに、まあ小川洋子だから一応見とくか、くらいな感じで借りてきたんだけど、予想外の面白さ。いい意味で対談慣れしていないように感じた。相手との中間点を見出す、というより、目の前の相手に真摯に向き合って「対話」していて、全体のトーンは彼女の作品にも通じるひかえめでどこか可愛らしく穏やかな雰囲気。喋り声が聞こえてくるような。

何らかの形で自己を表現し続けている人々の生の言葉を、味わっていただけたらと願っています。完成された作品に接するのとは、また異なる種類の喜びがきっとあるはずです。(まえがきより)

特に感じ入ったのは、最終章、五木寛之の言葉。

つまり、ひとつのものを、概念的に見ていてはだめなんです。「人間」という言葉も「恋愛」という言葉も「愛情」という言葉も「友情」という言葉も、みんなどうしようもないくらい通俗化されて汚れていますが、その殻を打ち破って、そのなかから本来の姿をつかみ出してみようじゃないか。それが作家の仕事だろうという気がしてしかたがありません。

この方の著作は読んだことなくて、小説の背表紙のタイトルだけ見るとなんかちょっとクサくて気恥ずかしい、みたいな先入観を持っていたんだけど、なるほどこういう気高い心構えで創作に臨んでいる方なのですね。今度どれか手にとってみようと思う。

他にもいろいろ、感心したりうなづいたり、くすりと笑ったり。オススメです。