さりげない希望

夕方、いつものように河原で楽器を吹いていたら、向こう岸を歩いていたおばさんが立ち止まり、「上手くなったねー、マル!」とこっちに向かって叫んでくれた。マル、のところで頭の上で腕を丸い形にするジェスチャーつきで。たしかに今日はなんか調子良い感じで、唐突に思い浮かんだクリスマスの賛美歌のメロディーを黙々と吹いているときのことでした。多分曲も良かったんだろうな。照れる。けど嬉しかった。
帰りに本物の「カラスの行水」を見かけて笑ってしまった。川で探餌中だったのはどうもササゴイだったような気が。

ダーティ・ワーク

ダーティ・ワーク

絲山さんの新刊。これ好き。話が進むにつれて登場人物のつながりがちょっとずつ明らかになっていく、そのさりげなさ具合がいい感じ。だからといって特に何か大きな事件に発展するわけではないところがまた好ましい。クールな筆致が今回も冴えてます。同一人物でも人称を「彼女」「私」と使い分けてたり、2つ目の話のバカっぽい文体とか、絶妙。
うちの職場では絲山さんの新刊、遅れて予約してもそんなに待たずに借りられることが多いような。図書館を利用する人のメンタリティーと絲山作品はそりが合わないのだろうか。そんな気もするな。
家庭の医学

家庭の医学

小川洋子の本に出ていた河合隼雄のエッセイで紹介されていた小説。悲惨な状況かもしれないけど、それを受けとめる自分の感情の動きも含めて、冷静に観察している筆者の中立的なまなざしが、どこか希望につながっているような印象。病状の生々しい描写も多いのに、陰惨な感じは不思議としない。何度でも読み返したいような思いに駆られる、魅力的な小説でした。