よれよれの幸せ
秋晴れの休日、早起きして、ちょっとした用事をひとつずつゆっくり片づける。ささやかな充実感。(でも母のおしゃべりにはイラっとして、無愛想になってしまった。まだまだ器が小さい。)
気前良く落ちていく枯葉を見ていたら、生きるって贅沢だなーという気がした。どうせ枯れるのに、なんて考えの入り込む余地なく、毎年惜しげもなく茂っては散りゆく木の葉の、いさぎよさと美しさ。衣替えをめんどくさく思ったり、寒さで外に出るのが億劫になるのも人間らしさだけど、なるべくなら気もちの出し惜しみをせずにその時その時を味わいつくせたら、いいなと思う。
遅ばせながら今月になって初めてちゃんと聴いた「群青」がすごくよかったから(PV最高!)スピッツの新譜を借りてきた。彼らの音楽の、長年のファンの人が安心感をおぼえるであろうところが、わたしはちょっと苦手だったりするのだけど、それにしてもよくできたアルバムだなーと感心。特に、歌詞の言葉遣いに随所ではっとする。「よれよれの幸せ」「現は見つつ 夢から覚めず」とか、いいよなー。音もぐっとくるところ多数。「群青」のグロッケン、絶妙な塩梅だと思っていたら、亀田さんだったのか。どうりで。一緒に借りてきた鬼束さんの新譜では「MAGICAL WORLD」がよかった。年を取るにつれて、こういう刃のような不安定さは自分の中で徐々に薄れてきた感はあるけど、わかる気がする。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/10/12
- メディア: 単行本
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僕はそのようにして走り始めた。三十三歳。それが僕のそのときの年齢だった。まだじゅうぶん若い。でももう「青年」とは言えない。イエス・キリストが死んだ歳だ。スコット・フィッツジェラルドの凋落はそのあたりから既に始まっていた。それは人生のひとつの分岐点みたいなところなのかもしれない。そういう歳に僕はランナーとしての生活を開始し、おそまきながら小説家としての本格的な出発点に立ったのだ。
長年の読者としては、エッセイなどで時おり顔をのぞかせる、春樹さんのマラソンランナーとしての姿がうかがえて興味深かったし、走ることをつうじて小説家としての半生を振り返る内容になっていて、多少くどく感じるところもありつつ、面白かった。ちょうど自分より四半世紀年上の人なんだ。そして、今まさに三十三歳の自分としては、とても考えさせられる内容でした。借りて読んだのだけれど、買い直して、昼に電話で話した同い年の友人に貸そうかな。もしかしたら、これを読んだらちょっとは元気になってくれるかも。
他に、傍線を引きたくなったところ。
人生について考えると、ときどき自分が浜に打ち上げられた一本の流木に過ぎないような気がしてくる。
正気を失った人間の抱く幻想ほど美しいものは、現実世界のどこにも存在しない。
人の思いは肉体の死とともに、そんなにもあっけなく消えてなくなってしまうものなのだろうか、と。