ひとり あるく

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

絲山さんの著作は去年たくさん読んで(読んでないのはあと1、2冊だと思う)、たしかに面白いんだけど、個人的には好きになりきれない印象を受けた。えぐ味がちょっと強すぎる感じ。今年になってこの文庫を職場で見つけて、表紙のデザインがすごくいいなーと思って、未読だったので読んでみたら、これまで読んだ作品の中で一番良かった。姉との過去にまつわる部分に関しては「なにもそんなことまで書かんでも・・・」という気が最初したけど、そこがあるからこそ他の部分のよさが際立つのかもしれない。全体の淡淡としたトーンが。すごく好きな小説。

「孤独ってえのがそもそも、心の輪郭なんじゃないか?外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ。例えばあたしだ。あたしは一人だ、それに気がついているだけマシだ」

解説にも引用されているセリフ。印象に残る。そして解説にも書かれていることだけど、この話に限らず、音楽の使い方が本当に上手で、惚れ惚れします。

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

東京番外地」で紹介されていたのでさっそく読んでみた。YA本なので軽く読めてわかりやすい。知らないことや、昔学校で習ったかもしれないけど忘れていたようなことがいろいろ書いてあって、勉強になった。あとがきにじんわり感動。

置いてけぼりになったような気がしても、走る理由が分からないうちは走る必要なんてない。走る人は周囲の景色が分からない。足もとに跳ねるバッタや葉っぱの裏にいるカタツムリに気づかない。夜明け前の空が透明なブルーであることや、秋が深まって息が白くなる瞬間や、じっと夜空を見上げていれば都会でもたくさんの星が見えてくることなどを忘れてしまう。
ゆっくり歩こう。いろいろ悩みながら。いろいろ考えながら。いろいろ眺めたり、発見したり、ため息をついたりしながら。どうせゴールなんて、そんなに変わらない。

この「よりみちパン!セ」というシリーズ、とても面白そうなので、他の本も読んでみたい。YAや児童のコーナーにも読んでみたい本がたくさんあるので、億劫がらずに手を伸ばすようにしよう。と思う。