職業的勘のようなもの

仕事でいつも、書棚に並んだ膨大な数の本の背表紙を目にしているものだから、最近は、タイトルから日本の小説とそれ以外との見分けがつくようになってきた。タイトルを記憶したということではなくて(それもあるけど)、言葉の雰囲気で、小説に込められた思いの余韻みたいなものが漠然と感じ取れる、というか。端的に言うと、どこか思わせぶり。だから例えば、ある著者の小説の並びに同じ著者のエッセイが混じっていると、反射的に違和感を覚えたりする。わたしは本を並べたり整理したりするのに人より時間がかかる質なんだけど、たしかに、そんなことに気を取られてたら遅いはずだと思う(単に上の空なだけかもしれない)。見ようと思って見てるわけじゃないんだけど。言葉ってやっぱり面白い。

会社の人事―中桐雅夫詩集

会社の人事―中桐雅夫詩集

今日、詩のコーナーで目にとまったのが、この本。このタイトルで詩集?と思ったら気になって、借りてみた。表紙も素敵だったし(平野甲賀氏画)。早番だったので、さっき2時間ほど眠って目が覚めて、そのまま布団の中で半分くらい読んで、気に入ったところ。

まだ三分もたっていません、
ゆで卵もまだできないのに、
もう我慢できなくなるでしょう、
きっと音を出したくなるでしょう。

やがて別れてみんなひとりになる、
早春の夜風がみんなの頬をなでていく、
酔いがさめてきて寂しくなる、
煙草の空箱や小石をけとばしてみる。

子供の頃は詩人って遠い存在だと思ってたし、そうでない普通の人が詩を書くのはひどく恥ずかしいことだと思ってたのに、まさか大人になった自分がたまにこそこそとその真似事をしようとは(こそこそするのは今でもやっぱり恥ずかしいから)。人生ってわからない。

コーヒーもう一杯 III (3)

コーヒーもう一杯 III (3)

最近お知り合いになった方に貸してもらって読んだら、とても面白かった。とても丁寧に描き込まれているせいか、漫画の中の時間の流れがゆったりしていて、人の哀しみややるせなさも包み込むようなあたたかさが随所で感じられる。コーヒーは生活に欠かせないわたしですが、ここしばらく不精してインスタント一辺倒なので、久しぶりにちゃんといれたくなった。まずは切らせている豆を買ってこなければ。